2018-06-22

揮発性

更新される秩序を生命と呼ぶならば、更新による変化がなくなった秩序は、既に死んでいると言える。ヴァレリーはこのことを固体と液体の比喩で表現した。

固体と液体のあいだで相転移しながら流動する生命の大部分が、死とともに揮発してしまった後でも、貝殻、化石、書物、建造物などの残滓が、その生命の面影を宿す。

揮発性メモリとしての作者と、不揮発性メモリとしての作品。

作品もいつかは揮発してしまうが、少しでも不揮発性を高めようとする傾向が葬制につながったのだとすれば、作品を残すこともまた、人間的な行為なのだと思われる。

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