2018-11-15

まなざしの装置

平芳裕子「まなざしの装置」を読んだ。

様々なメディアを介して自動的に志向される複製の完全性が、正統なものAuthenticity=auto+accomplishを彫琢する過程は、技術の完成に取り憑かれた近代特有の現象だ。

ファッションもまた同じ過程を辿り、ファッション・プレート、パターン、ショーウィンドウ、ファッション展などを介して、「飾る女性」、「縫う女性」、「模る女性」、「巡る女性」というイデアル=理想の下、現実が理想の複製となるようにイメージが反復されてきた。理想に追随するように現実が更新されていくこの過程が、モードと呼ばれるものだろう。

ファッションはなぜ女性のものと見なされるのかという問いを起点に、近代アメリカを中心として組み立てられる本書のストーリィ自体もまた、近代科学の作法に則った論文構成や論理展開の上に成り立っており、何もかもを単一のイデアルの下に飲み込んでしまえる近代というシステムの無慈悲なまでの強力さをひしひしと感じる。

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