2018-07-23

Cryptoeconomics

日常生活の基底となる時間や空間の絶対性は、「光速度が無限大である」という暗黙の前提に長らく支えられていた。そのことが暴かれ、代わりに「光速度が有限の一定値である」という前提を採用した場合に、時間と空間がどのように見えるかという観点が「相対性理論」として提唱されたのは、つい100年ほど前のことだ。時間も空間も、ある前提の下でなされる便宜的な解釈であり、時空概念の妥当性の問題は、それが依拠する前提の妥当性の問題に読み替えられる。

貨幣経済の基底となる貨幣もまた、国家のように半ば絶対的な前提に長らく依拠してきた。暗号経済Cryptoeconomicsが目指しているのは、ブロックチェーンという充足理由律に基づく別の前提を持ち込むことで、相対性理論が時間と空間に対してやったのと同じことを、貨幣に対してやり遂げることだと思う。提唱される新たな貨幣観が広く共有されるかは、前提の妥当性にかかっており、暗号のもたらす「固さ」がそれを担保し得るのだろう。

AIとCryptoeconomicsを対置させる話も見かけるが、両者の違いの中で最も面白いのは、「理由」というものにどれだけ期待しているかという点だと思う。

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