2018-07-27

空間〈機能から様相へ〉

原広司「空間〈機能から様相へ〉」を読んだ。

近代の空間概念が掲げた「機能」とは、特定の様相の固定のことであったように思う。それを突き詰めることで得られるのは、予断された真・善・美に縛られた密着空間である。一方で、その否定が、任意の様相を可能にする方向で突き詰められると、結局は様相がない状態への収束を招き、均質空間という離散空間が生み出された。密着空間=終対象と離散空間=始対象の両極端だけが、近代の一真教的な空間概念が提示し得た空間であった。

「機能から様相へ」という題は、特定の様相への固定を免れることで、両極端に回収されないような空間概念を宣言したものとして捉えることができる。

建築に限らず、何かを作る際には、具体的なものとして作らざるを得ないが、具体的なものを立ち上げるには、特定の境界を設ける他なく、それは判断基準を設定することにつながり、少なからず「Aである」という宣言を含んでしまう。それが「Aである」に留まって近代的な機能にならないために、「A・非A・非A非非A」、ΓΓA、〈非ず非ず〉によって、境界=判断基準を固定化することなく、様相の重なり合いに展開していく道に進む。それは三次元空間+時間という絶対的時空概念から、四次元時空という相対的時空概念への変化とも符合している。

一つの判断基準があるのでもなく、ないのでもなく。重なり合うことで、ダブルスタンダードではなくデュアルスタンダードとして現れる。重なり合った様相によって様々に彩られる、〈秋の夕暮れ〉の建築を、作っていけるだろうか。

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