2017-04-04

ディザインズ

Amazonのおすすめに、五十嵐大介の「ディザインズ」という漫画が挙がっていた。Google Booksでサンプルを読んでみたところ、これは紙の本で読んだほうがよさそうだと思い、久々に漫画を紙媒体で購入した。

細かい線の集合が絵という一つの秩序をなしている感じがすごくよい。境界を明確に描くことで秩序を作るよりも遥かに難しいと思うが、生命という秩序を隔てる境界が本来的に多分に含む、ある種の曖昧さを上手く表現しているように思う。
境界は常に脆く不安定で曖昧である。維持するための不断のエネルギー摂取が不可能になったとき、その灰色の境界は崩壊する。
An At a NOA 2017-03-22 “灰色の境界
浦沢直樹の漫勉」の五十嵐大介特集において本人や浦沢直樹が語ることも、そういったあたりに繋がっているように思われる。
ある季節の、ある時間帯を体感した自分の感動、感覚をどう人に伝えられるか。それを、一枚の絵で描くよりも、シーンやセリフを連ねていって、自分の体験を、漫画を読んだときに、体験できるようにならないかな、みたいなことで描いている。(五十嵐)
自然物って、枝がどうなっているかなんて、分からないことだらけだし、そういうものを、分かる物として描いちゃうとダメなんですよ。分からない物として描く、そうすると自然物になるんですよね。(浦沢)

言語も本来は曖昧さを含んでいるはずが、送り手や受け手の使い方によって、明確なものになってしまうことがある。言葉によって抽象できない、というよりは、言葉で抽象することで、意図しない秩序に固定されてしまう、というのが、本当のところなのかもしれない。そこに陥らないために、物理的身体のセンサに頼るというのは健全な対応だと思う。物理的身体によって抽象されることで秩序は形成しつつ、心理的身体と物理的身体の距離感によって境界の曖昧さが残る、というか。

「ディザインズ」はストーリィ的にもSFを含んでいて興味深い。動物の人化、感覚の共有、環世界。哲学的だ。他の作品も読んでみようか。

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