2018-09-09

ドローンの哲学

グレゴワール・シャマユー「ドローンの哲学」を読んだ。

物質的な遠近感に応じて把握される物理空間の中に、観念的な遠近感に応じて把握される別の空間をオーバーレイすることは「情報化」と呼べるが、ドローンがもたらす距離空間の変化もまた、一種の情報化であると言える。

ドローンの生み出す「距離」が新しいからこそ、それによって可能になった現象を、戦闘や道徳、法、権力といった既存の「距離」で表現することへの違和感が生まれ、一方的に別の距離空間を採用することへの非難がなされる。どのようなかたちであれ、その違和感を解消するには慣れるための時間が必要になる。

会話、教育、受精、介護、戦闘、…。あらゆるかたちのコミュニケーションにおいて、距離空間の変化は、当初は脱-人化unmanned、無人化として受け取られる。

根底には、人間は人間に何かをしてほしいという願望があり、この「人間に」という感覚を決めるのが「距離」の近さなのだろう。

その「距離」感は、当然「人間は」の部分にも跳ね返ってくる。それがつまり「私は何者になろうとしているのか」という行く末の問題であり、ドローンだけでなく、あらゆる「情報化」において現れる問題なのだ。

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