2019-04-16

対称性人類学

中沢新一「対称性人類学」を読んだ。

対称性論理と非対称性論理という区別は、抽象過程における同一視の基準の変化の緩急の違いに対応しているのだと思われる。

非対称性論理では、同一視の基準を固定化し、抽象の仕方を不変・普遍なものにすることが目指されるのに対し、対称性論理においては、場面に応じて基準が変化する。ただし、対称性論理においても、基準が全くランダムに変化してしまえば、「対称性論理」という一つのものとして維持されないため、許容される変化の仕方にも、何らかの傾向が現れざるを得ない。宗教、神話、科学、意識、無意識、などとして概念化されるのは、その傾向である。

結局、対称性論理と非対称性論理の区別も、「どのような同一視の基準の変化の仕方を是とするか」という同一視の基準に基づく抽象化の現れである。「非対称性」や「形而上学」として批判されているのは、「同型」であることの基準を一途に固定化しようとする傾向であり、何らかの基準に基づいて同一視すること自体は避け難いように思う。それは、何かを認識したり、理解したりすることそのものである。

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