2016-12-02

整合性の破綻

意味付けのみに基づく自然な判断機構においては、整合性が破綻しない。それは非常に長い時間スケールにおいて、すなわち、多数の判断機会を確保することで、整合性を担保しながら判断および変化していく。自然の織り成す風景が美しいとすれば、そのような理由の不在による整合性に由来するのだろう。

そこに投機的短絡を持ち込むことで、整合性を破綻させる代わりに、とてつもなく短い時間スケールの中で判断および変化するようになったのが、理由付けに基づく意識という判断機構である。

破綻した整合性を何とか補修しようとする努力としての学問は、その究極として、整合性の復活による自然の美しさの再現を目指すが、ゲーデルの不完全性定理によれば、演繹的な手法は整合性を担保できない範囲を有し、また、整合的であることを自ら示すこともできない。

理由を欲する人間は、AIのはじき出す論理に基づかない整合的な判断を受け入れるのに苦労するだろう。理由付けによってわざわざ崩した判断の整合性を、論理によって再生しようとする様は、とてつもなく滑稽にみえるかもしれない。しかし、その方法によって意識はこれだけ短い時間で多くの判断を下してきたのだ。

では、情報処理能力の発展により、短い時間スケールにおいても多数回の判断が下せるようになったとき、そこに理由を求める理由はなんだろうか。こうして、充足理由律の渦の中に落ち込んでいく人間を描くSFも面白いかもしれない。

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