2016-01-28

電子書籍2

電子書籍についてその2。

森博嗣の新シリーズ「彼女は一人で歩くのか?」には
「熊の生態」という本が出てくる。
主人公のハギリはロシア語が読めないので
翻訳機を兼ねたスコープを通して読むのだが、
その途中で真賀田四季からのメッセージが一時的に挿入される。
ここではスコープの側がクラッキングされたということに
なっていたが、紙の本でなければ書籍の側を操作することも可能だ。
「彼女は一人で歩くのか?」の電子書籍版では是非そういった
仕掛けをやってほしいが、おそらくそうはなっていないだろう。
そもそもreader(リーダと読者)側がそういうことを想定していない。

漫画、映画、アニメ、演劇、音楽、朗読、ゲームその他諸々のいずれとも違う、
まぎれもない本という形式でありながら電子化による紙媒体との
差別化は如何にして図れるだろうか。

季節、時間帯、あるいはセンサによる入力等に応じて
表示する文章を変えたとき、その作品はもはやスタティックな
本としてではなく、ダイナミックなストーリィとして受け取られる。
小説では、人称を自由に行き来するような表現もできるだろうか。
ページをめくるたびに文字数が少なくなることで緊張感の高まりを表したり、
めくってもめくっても文字が出てこない、あるいは逆に、
めくってもめくっても「失敗した失敗した失敗した」のような、
富豪的プログラミングならぬ富豪的ライティングだって可能なはずだ。
それも、予め決められたページ数ではなく、例えばページのめくり方に応じた
終了条件も可能なはずだ(10ページ以上めくった段階で1秒以上めくらなかった
場合に次に進む、等のように)。
円城塔あたりがこういうことに興味をもってやらないだろうか。

この本は電子書籍で読まないとわからない、
というような本が出てくることを切に願う。

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