2015-11-04

焦点距離・考

先日の京都には23mmと90mmを持っていった。
京都の庭は23mmの方が撮りたい絵が多い。

23mmは空間体験を切り取るイメージで、
90mmはふとした視覚体験を切り取るイメージがある。
今回訪れた寺院はどこも室内を含んだ庭の体験が
すばらしいところばかりだったので、
23mmが合っていると感じたのだろう。

90mmは視覚としては狭すぎるものの、何か気になった
対象それ自体を描き出すのには抜群だ。
そういう意味では、雑踏等の元々設計されていない
空間でこそ役割が際立つのかもしれない。
23mmは逆に視覚としては広すぎる。
普段視覚として意識的には捉えていない空間も
入ってくるおかげで、空間体験的な表現にはぴったりで、
設計された空間がよく似合うのだと思う。

視覚にぴったり符合するのはどのレンズだろうか、
と考えたとき、ふと昔使っていたハッセルブラッドの
ことを思い出した。
神保町の小さなカメラ屋で中古で買ったハッセルブラッドには
80mmのレンズがついている。これは35mm換算だと50mmだ。

5年以上前に、母方の実家が取り壊されるということで、
このカメラを片手に写真を残しに行った。
幼少の頃、よく遊びに行った家で、当時でもその面影が
至るところに残っていた。
ハッセルブラッドを構えて上からファインダを覗くと、
何の違和感もなく、淡々とその思い出の風景を切り取れて
いたなという記憶がある。
その写真はリバーサルで撮っていて、確か現像した写真は
母親にプレゼントしたはずだ。ポジはどこにやったっけ。

そんなことを考えると、やはり標準レンズという名は偉大というか、
私の目は35mm換算で50mmのような気がする。
今度発売するXF35mmF2ではどんな視覚が得られるだろうか。
倍率1倍の望遠鏡となることへの期待を込めて。

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