2014-10-21

男女

そして男は女に対する絶対的な勝利宣言に至った。

———
長い歴史の中のあらゆる制度において、
男は常に女に先行しようと努めてきた。
過去に女が排斥された仕組みを挙げれば
枚挙にいとまがないだろう。
社会という制度、国家という制度…。
何を苦心して男は自らの立場を死守しようとしてきたのだろうか。


性的共食いにおいて、捕食される側は常に雄である。
遺伝子を残すという生物の至上命題において、
雌の絶対的優位は約束されているようなものだ。
生まれながらに、いや、生まれる前から背負っていた
その絶対的な劣等感を払拭するために、雄は自らの優位性を
作り上げようとして様々な仕組みを作ってきたのでは
ないだろうか。


時は資本主義経済のゆきづまった21世紀初頭。
この時代のわかりやすいステータスの一つが仕事である。
旧き昭和の「男尊女卑」を脱出し、女性にも社会進出を、という
セリフが声高に叫ばれる中、ゾッとするようなニュースが二つ
飛び込んでくる。
一つは女性登用の数値化目標の義務化
もう一つは企業による卵子凍結の保険適用だ。


圧倒的不利な状況を何とかごまかすために
雄は苦心して砂上の楼閣とも言える数々のシステムを築き上げる。
その中に後から雌を取り込むことで、あたかも
雄の優位性が存在するかのような錯覚を作り出す。
最終段階として、そのシステムの中での繁栄の対価として、
本来雄が勝ち得なかったもの、雌の絶対的優位性を担保するものであるところの
生殖機能を奪い取る。
これが暗黙のうちに完遂されたとき、
男は女に対する絶対的な勝利宣言に至るだろう。
———

そんなSF小説があってもよい。

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