2018-10-07

考える皮膚

港千尋「考える皮膚」を読んだ。

内と外を隔てる境界は、内や外の在り方を決める重要な役割を担っている。人間の身体という内にとっては、皮膚が最大の境界であり、境界侵犯へのアラートである触覚は、内と外の関係にとって最も重要な感覚だと言える。

むしろ、境界を定めることによって内と外の区別が生じることを考えれば、内ありきで境界を重視することすら既に転倒しており、本質は表面にあるということなのだろう。

網膜という小さな境界によって厳然と区切られた精神という内こそが自己であるという近代的な信念にすがったままでは、内と外、あるいは内同士の関係は次第に矮小化し、各々がアリジゴクへと収束していくだろう。

皮膚や情報通信網、あるいは別の新しい「皮膚」における触覚を通じて、内と外の関係の更新が続いてこそ、人間は生きていることになるはずだ。

No comments:

Post a Comment